2)シャンパーニュ地方(Champagne)

(1)概要

・気候:大陸性気候と海洋性気候、年平均11℃、日照時間1680時間、年間降水量700ml

・土壌:マルム県 白亜質の母岩をもつ土壌、オーブ県 ジュラ紀キンメリジャンの泥炭質土壌で粘土質が多い

・白亜(=チョーク)はベレムナイトという軟体動物の化石や円石藻の化石からなる。保湿性が高く、乾燥した時期もブドウの根に水分を供給することができる。

(2)歴史

・4世紀頃古代ローマ人によってブドウ栽培がもたらされた。中世には修道士によってブドウ畑が拡大された。当時は非発泡(赤ワイン)を造っていた。

・シャンパンは、寒さのために発酵が途中で停止したまま樽詰めされたワインがイギリスへ輸出され、ガラス瓶に詰められてそのまま瓶内二次発酵が発泡したのがはじまり。

・1728年フランス国王ルイ15世はガラス瓶に詰められたワインの流通を初めて許可した。

・1729年最初のメゾン(醸造所)「ルイナール」がランスに設立した。

・1908年当時、マルム県(Marne)、エーヌ県(Aisne)、セーヌ・エ・マルヌ県(Seine-et-Marne)、オート・マルヌ県(Haute-Marne)だったが、1927年オーブ県(Aube)も含まれることになった。

・2015年、シャンパーニュの歴史が刻まれた景観が「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」としてユネスコの世界遺産に登録された。

・2020年の輸出国は1位イギリス、2位アメリカ、3位日本

(3)主要ブドウ品種

・白ブドウ:シャルドネ(Chardonnay)

・黒ブドウ:ピノ・ノワール(Pinot Noir)、ムニエ(Meunier)

(4)ブドウ品種の特徴

・シャルドネ:コート・デ・ブラン(Côte des Blancs)地区、コート・ド・セザンヌ(Côte de Sézanne)地区で主に栽培(約28%)、繊細さと新鮮味を与え、長期熟成を可能にする白ブドウ

・ピノ・ノワール:モンターニュ・ド・ランス(Montagne de Reims)地区、コート・デ・バール(Côte des Bar)地区で主に栽培(約39%)、ボディと骨格をもたらすブドウ

・ムニエ:ヴァレ・ド・ラ・マルヌ(Vallée de la Marne)地区で主に栽培(約33%)、フルーティさとしなやかさを与える黒ブドウ。発芽が遅いため遅霜の被害にあいにくい。

(5)おもなA.O.C.

表 7

A.O.Cワインタイプ品種備考
シャンパーニュ
(Champagne)
白(発)ロゼ(発)シャルドネ
ピノ・ノワール
ムニエ
瓶内二次発酵方式
コトー・ド・シャンプノワ
(Côteaux champenois)
赤、白、ロゼシャルドネ
ピノ・ノワール
ムニエ
スティルワインのA.O.C.
ロゼ・デ・リセ
(Rosé des Riceys)
ロゼピノ・ノワールロゼのみのA.O.C.

(6)栽培地区とクリュ

・クリュは一般的に畑・区画をさすが、シャンパーニュ地方では村と同義

・グランクリュ(Grand Cru):17村

・プルミエクリュ(Premier Cru):42村

A.モンターニュ・ド・ランス(Montagne de Reims)地区

・フランス語で「ランスの山」という意味

・ピノ・ノワールの栽培が盛ん

・おもなグランクリュ(9クリュ)

 アンボネ(Ambonnay)、ブージー(Bouzy):南向きで力強くボディのしっかりした味わい、ブージーは最南端のクリュ

 マイイ・シャンパーニュ(Mailly-Champagne)、ヴェルズネイ(Verzenay)、ヴェルジ(Verzy):北向きで、エレガントで引き締まった味わい

 シルリ(Sillery):最北端のクリュ

 

B.ヴァレ・ド・ラ・マルヌ(Vallée de la Marne)地区

・フランス語で「マルヌの谷」という意味

・谷のため遅霜のリスクが高いためムニエが広く栽培されている。

・おもなグランクリュ(2クリュ)

 アイ(Aÿ)

 トゥール・シャル・マルヌ(ours-sur-Marne):例外的にピノ・ノワール主体

C.コート・デ・ブラン(Côte des Blancs)地区

・フランス語で「白い丘」という意味

・エペルネー(Épernay)市の南に広がる地区

・白い丘という名のとおりほぼシャルドネが栽培されている。

・この区画の大部分をモエ・エ・シャンドン(Moët et Chandon)社が持っており、この大部分でドン・ペリニヨン(Dom Pérignon)が造られている。

・おもなグランクリュ(6クリュ)

 メニル・シュル・オジェ(Mesnil-sur-Oger):厳格なスタイルで長期熟成のワインを造る。作柄が良い年のみにしか造られない「サロン」が有名。幻のシャンパン「ブランド・ブラン」とも言われている。

 アヴィーズ(Avize)

 シュイイ(Chouilly)

 クラマン(Cramant)

 オジェ(Oger)

 オワリ(Oiry)

D.コート・デ・バール(Côte des Bar)地区

・シャンパーニュ地方オーブ(Aube)県に位置する栽培地区

・1927年にシャンパーニュ地方に含まれることになった。

・土壌はキンメリジャンの泥炭質土壌でピノ・ノワールが生産されている

(7)シャンパーニュの醸造方法

表 8

工程シャンパーニュ英語表記
収穫(ヴァンダンジュ Vendange)・ブドウを房の状態で収穫することが義務づけられている。
機械での収穫は房ではなく粒の収穫になってしまうため、すべて手摘みでの収穫が義務づけられている。
Harvest(ハーベスト)
圧搾(プレシュラージュPressurage)・4000kgのブドウから2550Lの果汁のみシャンパーニュとして使用することができる。
・一番搾り(2050L)をキュヴェ(Cuvée)と言い、酸が豊富で長期熟成が可能
・二番搾り(500L)をタイユ(Taille)と言い、酸が少なく果実味はあるが、長期熟成に向かない
Pressing(プレッシング)
果汁清澄(デブルバージュDébourbage)・圧搾により得た果汁をタンクに入れ、12〜24時間静置することで果皮や種子などを沈殿させ、きれいな上澄みのみを発酵タンクに移す。Setrling(セットリング)
主発酵(フェルマンタシオン・アルコリック Fermentation Alcoolique)・10〜15日間アルコール発酵を行い、スティルワインを造る。Alcoholic Fermentation(アルコリュック ファーメンテーション)
マロラクティック醗酵(Fermentation Malolactique)・フレッシュな酸味を残すために行わない生産者が多い
・主発酵中や後に果汁やワイン中に含まれるリンゴ酸(マリック・アッシド)が、乳酸菌の働きによって乳酸(ラクティック・アッシド)と炭酸ガスに分解される
・副生成物として、ヨーグルトなどの乳製品の香りをもつ「ダイアセチル」が生じる
・マロラクティック醗酵の効果
 ワインの酸味がやわらげられ、まろやかになる
 ダイアチセルなどの香りにより複雑性が増し、豊潤な香味を形成する
 リンゴ酸がなくなることで、瓶詰め後のワインの微生物学的安定性が向上する
・アルコール発酵が終わった赤ワインは基本的に行う
・白ワインの場合はフレッシュな酸味が特徴のソーヴィニョン・ブランやリースリングでは行わない
・シャルドネは行うことも多い
・タンクで行う場合と樽で行う場合がある
Malolactic Fermentation(マロラクティック・ファーメンテーション)
調合(アッサンブラージュAssemblage)・収穫年の翌年春頃にヴァン・ド・レゼルブ(Vin de Réserve 前年までに収穫し貯蔵してある良いワイン)と調合する。
・これにより品質の安定と各メゾンの味の均一化を行う。
Blrnding(ブレンディング)
瓶詰め(ティラージュ Tirage)・リキュール・ド・ティラージュ(Liqueur de Tirage)を添加し、王冠の打栓(コルクと留め金)を行う。
・リキュール・ド・ティラージュは糖分と酵母の混合液で1Lあたり24gのショ糖を入れる。
Bottling(ボトリング)
瓶内二次発酵(ドゥシエム・フェルマンタシオン・アン・ブテイユDeuxième Fermentation en Bouteille)・リキュール・ド・ティラージュを加えたことで二次発酵が起こり、アルコールと二酸化炭素に分解される。
・発生した炭酸ガスはスティルワインに溶け込み発泡性ワインになる。
・発酵後のアルコール度数は13%を超えてはならない。
・おおよそ6〜8週間で二次発酵が終わる。
・役割を終えた酵母は澱となり沈殿する。
Second fermentation in the bottle(セカンダリー ファーメンテーション イン ボトリング)
瓶内熟成・ボトルを水平に置き、熟成庫で保管する。
・役目を終えた酵母(澱)が自己消化していき、ワインのなかでアミノ酸として溶け込んでいく。これにより、まろやかで複雑な香味が形成される。
 
動瓶(ルミアージュ Remuage )ピュピトル(Pupitre)と呼ばれる澱下げ台に瓶口を下に向けて並べる。
・およそ2〜12週間ピュピトルに倒立している瓶を左右に揺らしながら回転し、傾け瓶の側面にある澱を瓶口に集める。
・現在ではジャイロパレット(Gyropalette)という機械を使うメゾンもある。
Ridding(リドリング)
澱引き(デゴルジュマンDégorgement)・瓶口を-27℃の溶液につけ、溜まった澱を凍らせる。
・栓を抜きガス圧で澱を飛び出させる。
Disgorgemnt(ディス ゴージメント)
糖分調整(ドサージュ Dosage)・澱引きで目減りした分をリキュール・デクスペディシオン(Liqueur d’expédition)やリキュール・ド・ドサージュ(Liqueur de Dosage)で補う
・リキュール・デクスペディシオンやリキュール・ド・ドサージュはリザーヴワインなどに糖分を添加したリキュールのこと
・このときの糖分添加量により甘辛度表記が変わる。
Dosage(ドサージュ)
打栓(ブシャージュ Bouchage)・コルクを打ち込み金属製の止め板と針金でできたミュズレ(Muselet)で固定する。Corking(コーキング)

ピュピトル

図 6

(8)シャンパーニュの甘辛度表示

・世界のスパークリングワインの甘辛度はシャンパーニュの甘辛度に一致している。

甘辛度表示残糖量(g/L)
辛口ブリュット・ナチュール(Brut Nature)
パドセ(Pas Dosé)
ドサージュ・ゼロ(Dosage Zero)
3未満
 エクストラ・ブリュット(Extra Brut)0〜6
 ブリュット(Brut)12未満
 エクストラ・ドライ(Extra Dry)12〜17
 セック(Sec)17〜32
 ドゥミ・セック(Demi Sec)32〜50
甘口ドゥー(Doux)50超

(9)シャンパーニュの表記

A.ノン・ヴィンテージ(NV  Non Vintage)、ノン・ミレジメ(Non Millésimé)

・シャンパーニュではアッサンブラージュ(調合)を行うのが一般的

・瓶詰(ティラージュ)後最低15ヵ月間は出荷不可

・瓶詰から澱引き(デゴルジュマン)までは12ヵ月以上が義務づけられている。

B.ミレジメ(Millésimé)

・ブドウの出来の良い年には、その年のブドウのみで造られるシャンパーニュ

・収穫年の表記

・瓶詰から36ヵ月は出荷できない。

C.プレステージ・キュヴェ(Cuvée Prestige)

・各メゾンのフラッグシップシャンパーニュ

・例:モエ・エ・シャンドン → ドンペリニヨン

D.ブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)

・白の白という意味

・白ブドウのみを使って造ったシャンパーニュ

・基本的にシャルドネ100%

E.ブラン・ド・ノワール(Blanc de Noirs)

・黒の白という意味

・黒ブドウのみ(ピノ・ノワールとムニエ)を使用したシャンパーニュ

F.ロゼ(Rosé)

・ロゼワインを使ったシャンパーニュ

(10)略号

A.ネゴシアン・マニュピュラン(Négociant-Manipulant)

・略号:N.M.

・ブドウを購入してシャンパーニュを製造する製造者

・大手メゾンが多い(一般的 約400軒)

・例:モエ・エ・シャンドン、ヴーヴ・クリコ、サロン、クリュッグ、ボランシェなど

B.レコルタン・マニュピュラン(Récoltant-Manipulant)

・略号:R.M.

・自社畑で生産したブドウのみでシャンパーニュを製造する製造者

・例:ジャック・セロス、エグリ・ウーリエ、マキシム・ブラン、ポール・デテュンヌなど

C.コーペラティヴ・ド・マニュピュラン(Coopérative de Manipulant)

・略号:C.M.

・加盟する栽培農家が持ち込んだブドウを使ってシャンパーニュを製造する製造業者

・生産者協同組合

・例:ニコラ・フィアット、ボーモン・デ・クレイエールなど

D.レコルタン・コーペラトゥール(Récoltant-Coopérateur)

・略号:R.C.

・協同組合にブドウを持ち込んでシャンパーニュの製造を委託し、自社銘柄として販売すされたもの

・例:クロード・カザル、シャンシラーなど

E.ソシエテ・デ・レコルタン(Société de Récoltants)

・略号:S.R.

・一族が所有するブドウ畑で収穫された原料でシャンパーニュを製造されたもの

・例:アンドレ・クルエ

F.ネゴシアン・ディストリピュトゥール(Négociant-Distributeur)

・略号:N.D.

・できあがったシャンパーニュを購入し、自社ブランドとして販売されたもの

G.マルク・ダシュトゥール(Marque d’Acheteur)

・略号:M.A.

・スーパーやレストランなどのプライベートブランド

・イオンのトップバリュ?