6)ローヌ渓谷地方(Vallée du Rhône)

(1)概要

・アルプスからレマン湖を経由し地中海に流れ込むローヌ川流域に広がるワイン産地

・気候:北部、半大陸性気候、南部、地中海性気候

・ローヌ渓谷を北から南にミストラルという強風が吹き抜ける、このミストラルにより暑さを和らげ、カビなどの病害からブドウが守られる。

・土壌:北部右岸:花崗岩質、片岩質

    北部左岸:石灰岩、粘土質、石ころなど

    南部:粘土石灰質、泥炭、砂質、玉石

図 20

(2)歴史

・紀元前1世紀頃ブドウ栽培が伝わった。

・ローマ帝国の崩壊とともに販路を失い衰退する。

・中世、カトリックの修道院によりブドウ栽培が再開する。

・1309年アヴィニョン捕囚によりローマ法皇がアヴィニョンに居を構える。夏の居城としてシャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape 法皇の新しい居城)が建造された。

・1933年シャトーヌフ・デュ・パフ(Châteauneuf-du-Pape)の生産者がA.O.C.の原型を作成し、I.N.A.O.の設立に寄与した。

・1936年シャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)、タヴェル(Tavel)、サン・ペレイ(Saint-Péray)がA.O.C.を所得。

・近年では、多くのA.O.C.が認定されコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(Côtes du Rhône Villages)から独立している。

(3)主要ブドウ品種

・ローヌでは北部と南部で主に栽培されているブドウ品種が異なる

A.白ブドウ(北部)

・ヴィオニエ(Viognier)、マルサンヌ(Marsanne)ルーサンヌ(Roussanne)

B.白ブドウ(南部)

・グルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)、クレレット(Clairette)

C.黒ブドウ(北部)

・シラー(Syrah)=セリーヌ(Sérine)

D.黒ブドウ(南部)

・グルナッシュ(Grenache)、ムールヴェドル(Mourvèdre)、サンソー(Cinsault)

(4)広域A.O.C.

表 37

広域A.O.C.ワイン備考
コート・デュ・ローヌ
(Côtes du Rhône)
赤、白、ロゼ・ローヌ地方すべての県が対象であるが、ほとんど南部が製造している。
・さまざまな品種が認められている。
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ
(Côtes du Rhône Villages)
赤、白、ロゼ・コート・デュ・ローヌ(Côtes du Rhône)より基準が厳しい。
・ローヌ、ロワールを除いた4県
・特定の地域で生産され、厳しい基準を満たせば地理的名称を付記できる。

(5)北部

・ヴィエンヌ(Vienne)からヴァランス(Valence)までのローヌ川沿いの急斜面

表 38

小域・村名A.O.C.ワイン備考
エルミタージュ
(Hermitage)
赤、白・赤:シラー(Syrah)85%以上、マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ(Roussanne)の混醸が可能
・白:マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ
エルミタージュ・ヴァンドパイユ
(Hermitage Vin de Paille)
白(甘)・白:マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ
・45日以上陰干ししたブドウで醸造
クローズ・エルミタージュ
(Crozes-Hermitage)
赤、白・約1870haの広大なA.O.C.
・赤:シラー(Syrah)85%以上、マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ(Roussanne)の混醸が可能
・白:マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ
・ローヌを代表する銘醸地
ローヌ川が蛇行してできた南向きの急斜面に広がる
コート・ロティ
(Côte-Rôtie)
・ローヌ地区最北
・フランス語で「焼けた丘」という意味
・赤:シラー(Syrah)主体、混植、混醸としてヴィオニエ(Viognier)が20%まで認められている。
コンドリュー
(Condrieu)
・白:ヴィオニエ(Viognier)100%
シャトーグリエ
(Château Grillet)
・2011年からシャトー・ラトゥール(Chateau Latour)を所有するピノー家に買収された。
・3.5haでコンドリュー(Condrieu)内最小
・1936年A.O.C.認定
・白:ヴィオニエ100%
サン・ジョセフ
(Saint-Joseph)
赤、白・赤:シラー(Syrah)主体、混醸としてマルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ(Roussanne)が10%まで認められている。
・白:マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ(Roussanne)
コルナス
(Cornas)
・赤:シラー(Syrah)100%
・ローヌ渓谷地方で唯一のシラ(Syrah)ー100%
サン・ペレイ
(Saint-Péray)
白、発砲(白)・白:マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ(Roussanne)
・発泡(白):マルサンヌ(Marsanne)、ルーサンヌ(Roussanne)
・瓶内二次発酵
クレレット・ド・ディー
(Clairette de Die)
発砲(白)、発砲(ロゼ)・発泡(瓶内二次発酵):クレレット(Clairette)100%
・発泡(アンセストラル方式):ミュスカ(Muscat)
・アンセストラル方式:一次発酵途中のワインを瓶に詰め、王冠などで打栓して、残りの発酵を瓶内で行う方式
クレマン・ド・ディー
(Crémant de Die)
発泡(白)・発泡(白):クレレット(Clairette)、アリゴテ(Aligoté)をブレンドする
・瓶内二次発酵
コトー・ド・ディー
(Coteaux de Die)
・白:クレレット(Clairette)100%
シャティヨン・アン・ディオワ
(Châtillon en Diois)
赤、白、ロゼ・赤:ガメイ(Gamay)主体、シラー(Syrah)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)をブレンド
・白:アリゴテ(Aligoté)、シャルドネ(Chardonnay)

(6)南部

・モンテリマール(Montélimar)に広がるなだらかな丘陵地帯

・シャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)が有名

表 39

小域・村名A.O.C.ワイン備考
グリニャン・レ・ザデマール
(Grignan-les-Adhémar)
赤、白、ロゼ・南部最北のA.O.C.
・2010年コトー・デュ・トリカスタン(Coteaux du Tricastin)から改称
・赤:グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)を主体(合わせて70%)以上としたブレンド
・白:ヴィオニエ(Viognier)を30%以上使用したブレンド
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)を主体(合わせて70%)以上としたブレンド
コート・デュ・ヴィヴァレ
(Côtes du Vivarais)
赤、白、ロゼ・ローヌ川右岸、標高400nの台地でやや冷涼
・赤:グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)主体、サンソー(Cinsault)、マルスラン(Marselan)も認められている。
・白:グルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)主体、クレレット(Clairette)、マルサンヌ(Marsanne)をブレンド
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)を80%以上使用
デュシェ・デュゼス
(Duché d’Uzès)
赤、白、ロゼ・2013年に認定されたA.O.C.
・ニーム市(Nîmes)の北に広がる産地
・赤:シラー(Syrah)とグルナッシュ(Grenache)主体
・白:ヴィオニエ(Viognier)とグルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)が主体
コスティエール・ド・ニーム
(Costières de Nîmes)
赤、白、ロゼ・ローヌ地方最南部
・ミストラルが一年中吹き付ける
・赤:グルナッシュ(Grenache)、ムールヴェドル(Mourvèdre)、シラー(Syrah)主体
・白:グルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)、ルーサンヌ(Roussanne)、マルサンヌ(Marsanne)をブレンド
クレレット・ド・ベルガルド
(Clairette de Bellegarde)
・8haの小さい区画
・白:クレレット(Clairette)100%
ヴァントゥー
(Ventoux)
赤、白、ロゼ 
リュベロン
(Luberon)
赤、白、ロゼ・プロヴァンス地方との境界に位置する
・ロゼの比率が最も高い
・赤:グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)主体
・白:規定がない
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)主体
シャトーヌフ・デュ・パプ
(Châteauneuf du Pape)
赤、白・シャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)は、法皇の新しい居城という意味
・1936年にA.O.C認定
・玉石に覆われた土壌
・指定13品種から3〜4種類程度ブレンド
ジゴンダス
(Gigondas)
赤、白、ロゼ・2023年から白が認められた。
・赤:グルナッシュ(Grenache)主体50%以上使用、シラー(Syrah)、ムールヴェードル(Mourvèdre)をブレンド
・白:クレレット・ブランシュ(Clairette Blanche)
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)主体50%以上使用、シラー(Syrah)、ムールヴェードル(Mourvèdre)をブレンド
ヴァケイラス
(Vacqueyras)
赤、白、ロゼ・赤:グルナッシュ(Grenache)主体50%以上使用、シラー(Syrah)、ムールヴェードル(Mourvèdre)をブレンド
・白:ブルーブラン(Bourboulenc)やグルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)、サンソー(Cinsault)主体
リラック
(Lirac)
赤、白、ロゼ・ローヌ川を挟みシャトーヌフ・デュ・パプの対岸に位置する
・赤:グルナッシュ(Grenache)主体
・白:クレレット(Clairette)など
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)主体
タヴェル
(Tavel)
ロゼ・1936年認定されたA.O.C.
・ロゼ:グルナッシュ(Grenache)主体
ヴァンソーブル
(Vinsobres)
・2006年コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立
・赤:グルナッシュ(Grenache)主体
ラスト−
(Rasteau)
・2010年コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立
・赤:グルナッシュ(Grenache)主体
ヴァン・ドゥー・ナチュレル・ラストー
(Vin Doux Naturels Rasteau)
赤(甘)、白(甘)、ロゼ(甘)・ヴァン・ドゥー・ナチュレル(Vin Doux Naturels)はアルコール発酵途中に高濃度のアルコールを添加(ミュタージュ Mutage)し、発酵を途中で止めた天然甘口ワインのこと
ボーム・ド・ヴニーズ
(Beaumes de Venise)
・赤:グルナッシュ(Grenache)主体
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ
(Muscat de Beaumes de Venise)
赤(甘)、白(甘)、ロゼ(甘)・ヴァン・ドゥー・ナチュレル(Vin Doux Naturels)
ケランヌ
(Cairanne)
赤、白・2016年コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立
・赤:グルナッシュ(Grenache)主体
・白:規定なし

(7)シャトーヌフ・デュ・パプ品種

A.認可されている13品種

・グルナッシュ(Grenache)、ムールヴェードル(Mourvèdre)、シラー(Syrah)、サンソー(Cinsault)、ブラン・アルジャンテ=ヴァカレーズ(Brun Argenté=Vaccarèse)、クノワーズ(Counoise)、ミュスカルダン(Muscardin)、テレ・ノワール(Terret Noir)、クレレット(Clairette)、ピクプール(Piqpoul)、ブールブーラン(Bourboulenc)、ルーサンヌ(Roussanne)、ピカルダン(Picardan)

B.使用が禁止されている品種

・マルサンヌ(Marsanne)、ヴィオニエ(Viognier)、カリニャン(Carignan)